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金価格の月別パターン — 「秋の金」は本当か、過去データで検証する

長期の月別集計では、金は 1 月と秋に強く、初夏に弱いという傾向が繰り返し報告され、学術研究でも「秋の効果」として知られてきました。ところが 2017 年から 2023 年の 9 月は7 年連続でマイナスとなり、有名なパターンがそのまま逆転しています。この章では、語られてきた傾向と実データのずれ、そして平均だけを見ることの危うさを、毎日更新されるライブチャートとともに検証します。

公開 · 執筆 boobook.ai 編集部

長期データで語られてきた月別の傾向

金の月別リターンを数十年さかのぼって平均すると、月ごとに差があること自体は確認できます。多くの集計で上位に来るのが 1 月と 8〜9 月、下位に来るのが3 月と 6〜7 月です。変動相場となった 1970 年代以降のデータを使った研究では、秋(9 月・11 月)の平均リターンが統計的にも有意にプラスだったとする報告があり、「秋の効果(autumn effect)」と呼ばれてきました。

この傾向の説明として挙げられてきたのが、第 2 章で詳しく見る実需カレンダーです。インドのディワリと婚礼シーズン、中国の春節へ向けた宝飾業者の仕入れが秋から冬に集中し、1 月は年初の資金再配分がそこに重なる — 偶然の統計ではなく、理由のある傾向だと考えられてきました。

「秋の金」が逆転した 7 年 — パターンは裏切る

ところが直近の 10 年では、この有名なパターンが目に見えて崩れました。2017 年から 2023 年まで、9 月の金価格は 7 年連続でマイナスとなり、米系の市場メディアでは「9 月の呪い」として繰り返し報じられました。かつて最も強いとされた月が、最も弱い月の常連になったのです。

そして 2024 年・2025 年の 9 月は一転して大幅高となり、連敗記録は途切れました。この間、金相場を実際に動かしていたのは季節ではなく、FRB の利上げ・利下げサイクルと中央銀行の記録的な金買いというマクロの力です。

ここから引き出せる教訓は 2 つあります。第 1 に、季節性は市場の構造(レジーム)が変われば数年単位で反転しうるということ。第 2 に、「過去 N 年の月別平均」は集計期間の選び方ひとつで正反対の絵になるということです。季節性を語る記事を読むときは、まず「いつからいつまでのデータか」を確認する癖をつけてください。

平均のマジックに注意する — 平均・中央値・勝率

月別の傾向を測るとき、平均リターンだけを見るのは危険です。金は 1 か月で 10% 前後動く年があり(2008 年の金融危機、2011 年の急騰と急落、2020 年のパンデミックなど)、たった 1〜2 年の極端な値が 10 年分の平均をプラスにもマイナスにも見せてしまうからです。

そこで役に立つのが中央値と勝率です。平均が大きくプラスなのに中央値がゼロ近辺なら、「例外的な 1〜2 年が平均を持ち上げているだけ」の疑いが濃い。プラスで終えた年が 10 年中 5〜6 年程度なら、その月の傾向はコイン投げと大差ありません。このページのライブチャートには平均・中央値・勝率を並べた表を置いているので、3 つの物差しで見比べてください。

もう 1 つ、標本数の問題があります。暦月ごとの統計は 1 年に 1 標本しか増えません。10 年分のデータでも各月 10 標本、統計学の観点では「差があるともないとも言い切れない」水準です。数十年の研究で有意とされた月別の差も、効果の大きさ自体は月次ボラティリティよりずっと小さく、個々の年の予測に使える精度ではないことを覚えておいてください。

このページのチャートの読み方

上のライブチャートは、TwelveData の XAU/USD 月足終値から当サイトが毎日算出している暦月別の月次リターン統計です。進行中の月(まだ終値が確定していない月)は除外しています。約 10 年分の月足が算出元なので、「直近 10 年の姿」を映すことになり、数十年の長期集計とは違う絵になり得る点に注意してください。

読むときは、①棒グラフ(平均)で大まかな凹凸を掴む、②表で平均と中央値の差を確認する(差が大きい月は外れ値に注意)、③勝率が 10 年中 7 年以上/3 年以下のような偏った月だけを「傾向あり」の候補として覚える、の順がおすすめです。それでも第 3 章で述べる通り、単独の売買サインには使わないでください。

ライブデータ

金の暦月別・平均月次リターン(2016/12〜2026/09・当サイト算出)
平均リターン %
-2 0 2 4 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

各暦月の月次リターン(前月終値比)の単純平均。進行中の月は除外し、毎日自動更新。プラスの月でも個々の年はマイナスが珍しくない — 平均は少数の極端な年に引っ張られるため、下の中央値・勝率の表とあわせて読む。

出所: TwelveData XAU/USD 月足

暦月別の月次リターン統計(2016/12〜2026/09・当サイト算出)
月平均 %中央値 %プラスの年
1月 +3.6 +4.0 7/10
2月 +0.6 -0.0 5/10
3月 +1.4 +0.3 6/10
4月 +1.6 +1.3 6/10
5月 +0.6 -0.0 5/10
6月 -1.7 -1.9 3/10
7月 +2.0 +1.6 7/10
8月 +2.2 +1.1 5/10
9月 -1.2 -3.1 2/10
10月 +2.0 +1.9 6/9
11月 +0.5 +0.2 5/9
12月 +2.5 +2.7 8/10

平均と中央値の差が大きい月は、少数の極端な年が平均を歪めているサイン。「プラスの年」が全体の半分前後なら、その月の傾向はコイン投げと大差ない。各月の標本は 10 年前後しかなく、統計的な検出力はもともと低い。

出所: TwelveData XAU/USD 月足

1 日 1 回更新。価格は TwelveData の日次終値(JST)、各要因の値は出所の公表ラグを含みます。

見るべきデータ

金価格の月足終値 TwelveData XAU/USD
暦月別の平均・中央値・勝率 当サイト算出(このページのライブチャート、毎日更新)

よくある質問

Q. 金は何月に上がりやすいですか?
数十年の長期集計では 1 月と秋(8〜9 月・11 月)が上位に来ることが多い一方、2017〜2023 年は 9 月が 7 年連続マイナスになるなど、期間によって絵が変わります。このページのライブチャートで直近約 10 年の月別平均・中央値・勝率を確認できます。
Q. 「9 月の呪い」とは何ですか?
2017 年から 2023 年まで 9 月の金価格が 7 年連続で下落した現象の通称です。かつて「秋の効果」として最も強いとされた月だっただけに注目され、季節性が数年単位で逆転しうることの代表例になりました。2024 年・2025 年の 9 月は一転して大幅高となり、連敗は途切れています。
Q. 金の季節性は統計的に有意ですか?
変動相場以降の長期データを使った研究には、秋の月の平均リターンが有意にプラスだったとする報告があります。ただし有意性は集計期間に依存し、効果の大きさは月次の値動きのばらつきよりずっと小さいため、「統計的に検出できる」ことと「売買に使える」ことは別問題です。

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