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リバランスの仕組みと種類 — いつ・誰が・どちら向きに売買するのか
リバランスには「いつ戻すか」の決め方が大きく 2 つあります。月末や四半期末など決まった日に戻す定期型と、比率が一定の幅を超えてずれたときに戻す乖離許容幅型です。さらに、年金基金の資産配分、株価指数の定期見直し、レバレッジ型 ETF の日次調整と、同じ「リバランス」と呼ばれる売買でも、主体によって向きも時期もまったく違います。この章では、方式と主体ごとに、売買の向きと規模がどう決まるかを整理します。
公開 · 執筆 boobook.ai 編集部
いつ戻すのか — 定期型と乖離許容幅型
リバランスを実行するタイミングと方法は、次の 4 つに整理できます。基本になるのは最初の 2 つで、残りはその組み合わせと応用です。
- 定期型(カレンダー型)— 月末・四半期末・年末など決まった日に、比率を目標へ戻す。仕組みが単純な一方、多くの投資家の売買が同じ日に集中する原因になる。
- 乖離許容幅型(バンド型)— 目標比率の上下に許容幅を設け、幅を超えたときだけ戻す。相場が急変すれば期中でも発動し、幅の内側に収まっていれば期末でも何もしない。
- 併用型 — 定期的に点検し、許容幅を超えていたら実行する。機関投資家の多くはこの形で、「期末に必ず売買が出る」とは限らない理由でもある。
- キャッシュフロー型 — 資産を売らずに、新しく入ってくる資金や配当・利息を、比率が下がっている資産の購入に回す。掛金が流入し続ける年金基金や積み立て中の個人投資家は、この方法で売却に伴うコストを抑えられる。
売買の向きと量は「相対的な値動きの差」で決まる
リバランスの向きを決めるのは、個々の資産が上がったか下がったかではなく、資産どうしの値動きの差です。株式と債券が同じ率だけ上がれば比率は変わらず、売買は発生しません。株式が債券より大きく上がった月は株式売り・債券買い、株式が債券より大きく下がった月は株式買い・債券売りになります。
量は「運用資産の大きさ × 比率のずれ」で決まります。仮に運用資産 100 兆円のファンドで株式の比率が目標から 1% 上にずれた場合、元に戻すには 1 兆円の株式売りが必要です。値動きの差が大きい月ほど、また運用資産が大きい投資家ほど、リバランスの売買額は大きくなります。
月末のフローを推測する市場レポートが、その月の株価指数と債券指数の騰落率をまず確認するのはこのためです。ただし推測に必要な許容幅の設定や実行のタイミングは投資家ごとに違い、外からは見えません。向きの見当はついても、量と時期は分からない、というのが実情です。
年金基金とバランス型ファンド — 資産配分リバランスの主役
資産配分のリバランスで最も規模が大きいのは年金基金です。年金基金は長期の運用方針として資産ごとの目標比率(基本ポートフォリオ)を定め、実際の比率がそこから外れすぎないように管理します。
日本の公的年金を運用する GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式を 25% ずつ持つ基本ポートフォリオを採用し、資産ごとに乖離許容幅を設けています。運用資産は 200 兆円を大きく超えるため、比率が 1% 動くだけで数兆円規模の売買に相当します。実際の資産構成割合は四半期ごとの業務概況書で公表されており、目標からどれだけずれているかを事後に確認できます。
年金基金以外では、株式と債券を固定比率で持つバランス型の投資信託や、米国の確定拠出年金で主流のターゲット・デート・ファンド(加入者の年齢に応じて株式の比率を下げていく商品)が同じ性格の売買を行います。これらの多くが月末や四半期末の評価額を基準にするため、リバランスのフローは期末に集まりやすくなります。
指数のリバランス — 連動する資金が同じ日に同じ売買をする
株価指数や商品指数も、構成銘柄の比率や顔ぶれを定期的に見直します。MSCI の株価指数は 2・5・8・11 月の年 4 回、日経平均株価は年 2 回の定期見直しがあり、米国のラッセル指数は 6 月の再構成が有名です。
指数に連動するインデックスファンドは、指数とのずれを避けるために、変更が反映される日の終値で売買しようとします。その結果、見直しの実施日には引け(取引終了時)の出来高が突出し、採用される銘柄に買い、除外される銘柄に売りが集中します。変更内容は事前に公表されるので、先回りの売買が何日も前から入り、当日にはすでに価格へ織り込まれていることも珍しくありません。
商品指数にも同じ仕組みがあり、年に一度、各商品の比率を目標に戻します。金の先物に影響するこの年初のリバランスは、第 2 章で取り上げます。
レバレッジ型 ETF の日次リバランス — 順張りになる例外
ここまでのリバランスはすべて「上がったものを売る」逆張りでしたが、レバレッジ型・インバース型の ETF は例外で、順張りの売買になります。これらの商品は「指数の日々の騰落率の 2 倍」「マイナス 1 倍」といった倍率を毎日保つ設計で、そのために毎営業日の引け際に先物の保有量を調整します。
仮に、純資産 100 億円の 2 倍型 ETF が先物を 200 億円分保有しているとします。指数が 1 日で 5% 上昇すると、純資産は 110 億円、先物の評価額は 210 億円になります。翌日も 2 倍を保つには 220 億円分が必要なので、引け際に 10 億円分を買い増します。逆に指数が下がった日は売ることになります。インバース型も向きは同じで、指数が上がった日は売り持ちを減らす買い戻しが必要になります。
つまり、レバレッジ型もインバース型も、上がった日に買い、下がった日に売ります。値動きが大きい日ほど調整額が膨らみ、引け際の値動きを増幅する方向に働きます。日本でも、日経平均のレバレッジ型 ETF の残高が大きい時期には、引け際の先物売買が話題になります。
なお、この日次調整の副作用として、レバレッジ型 ETF は上げ下げを繰り返す相場で基準価額が目減りしていきます。長期では「指数の 2 倍」にならない点は、商品の仕組みとして押さえておく必要があります。
ボラティリティに応じて持ち高を変える運用
資産の「比率」ではなく「リスクの量」を一定に保とうとする運用もあります。リスクパリティやボラティリティ・ターゲットと呼ばれる戦略で、値動きの荒さ(ボラティリティ)が上がると保有を減らし、落ち着くと増やします。
この売買は、急落局面で順張りになります。株価が急落してボラティリティが跳ね上がると、ルールに従って株式の保有を減らす売りが出るためです。一方、資産配分のリバランスは下がった株式を買う向きなので、急落局面では両者が逆向きにぶつかります。「リバランスの買いが入るはず」と期待しても下げ止まらないことがあるのは、こうした逆向きの機械的な売りが同時に存在するからです。
混同しやすい言葉 — リアロケーション・銘柄入替・ロールオーバー
リバランスと一緒に使われ、混同されやすい言葉を整理しておきます。
- リアロケーション — 目標比率そのものを変えること。GPIF は 2014 年に国内債券を 60% から 35% に引き下げて国内外の株式を各 25% に引き上げ、2020 年には外国債券を 15% から 25% に引き上げた。こうした変更は数か月から数年にわたる一方向の資金移動を生み、毎期くり返されるリバランスとは影響の大きさも長さも違う。
- リコンスティテューション(銘柄入替)— 指数の構成銘柄を入れ替えること。比率だけを戻す狭い意味のリバランスと区別して呼ぶことがある。
- ロールオーバー — 先物の期限が近づいた限月から先の限月へ乗り換えること。保有量は変えず、持つ限月だけを替える取引で、比率を戻すリバランスとは目的が違う。
見るべきデータ
| GPIF の基本ポートフォリオ・資産構成割合 | GPIF 業務概況書(四半期) |
| 株価指数の定期見直し日程 | MSCI / 日本経済新聞社 / FTSE Russell |
| レバレッジ型・インバース型 ETF の純資産総額 | 各運用会社・取引所 |
よくある質問
- Q. リバランスはどのくらいの頻度で行われますか?
- 投資家によって異なります。月末・四半期末・年末といった定期型のほか、比率が許容幅を超えたときだけ行う乖離許容幅型、両者の併用型があります。レバレッジ型 ETF のように商品設計上、毎営業日行うものもあります。
- Q. 乖離許容幅とは何ですか?
- 目標比率の上下に設ける「ここまでのずれは許容する」という幅のことです。たとえば目標 25% に対して上下数 % の幅を設け、実際の比率がその幅を超えたときにリバランスを行います。幅の内側に収まっている間は売買が発生しないため、期末でもリバランスが出ないことがあります。
- Q. レバレッジ ETF のリバランスはなぜ順張りになるのですか?
- 日々の騰落率に対して一定の倍率を保つ設計だからです。指数が上がると純資産が増え、倍率を保つために必要な先物の量も増えるので買い増しが必要になり、下がった日は逆に売りが必要になります。インバース型も同じ向きの売買になります。