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WTI・ブレント・ドバイは何が違うのか — 3 つの指標原油と価格差の読み方

「原油価格」はひとつではありません。世界には産地や品質の異なる何百種類もの原油があり、それらの値段は数種類の「指標原油(ベンチマーク)」を基準に決まります。代表が米国の WTI、欧州の北海ブレント、中東のドバイの 3 つです。ニュースで「原油が上がった」と言うとき、米国メディアなら WTI、国際ニュースならブレント、日本の輸入価格ならドバイを指していることが多く、3 つの価格は同じ方向に動きながらも数ドルの差を持ち、その差自体が市場の状態を語ります。本章では、3 つの指標の違いと、価格差の読み方を解説します。

公開 · 執筆 boobook.ai 編集部

指標原油とは何か — 「品質」と「受渡地」で決まる

原油は産地ごとに性質が違います。大きな違いは 2 つ、「比重(軽い / 重い)」と「硫黄分(少ない = スイート / 多い = サワー)」です。軽くて硫黄分の少ない原油ほどガソリンなど高価な製品を多く作れるため高く評価されます。WTI とブレントはどちらも「軽質スイート原油」、ドバイは「中質サワー原油」で、品質の面ではドバイが最も安く取引されるのが通常です。

もう 1 つの違いは「どこで受け渡されるか」です。指標原油は特定の場所での受渡価格として定義されるため、その場所の物流事情が価格に反映されます。この 2 つの違いが、3 つの指標の性格を決めています。

  • WTI(West Texas Intermediate)— 米国テキサス州などで生産される軽質スイート原油。先物は CME グループ(NYMEX)に上場し、オクラホマ州クッシングのパイプライン結節点で現物を受け渡す。内陸の指標のため、米国内の在庫・生産・パイプライン事情に敏感。
  • ブレント(Brent)— 英国・ノルウェー沖の北海で生産される軽質スイート原油。先物は ICE に上場し、現物は受け渡さず現金で決済する。海上輸送される国際原油の指標で、世界の原油取引の3 分の 2 前後がブレント基準と言われる。
  • ドバイ / オマーン(Dubai / Oman)— 中東の中質サワー原油。アジア向けに中東から輸出される原油の価格基準で、日本や中国・韓国が輸入する原油はおおむねドバイとオマーンの平均価格をもとに決まる。

歴史的な実例: ブレント − WTI スプレッドはなぜ動くのか

WTI とブレントは品質がほぼ同じなので、本来は輸送費程度の差で並ぶはずです。実際、2000 年代までは WTI のほうがわずかに高い(品質が少し良いため)状態が普通でした。ところが 2011〜2013 年、米シェールの増産で内陸のクッシングに原油が滞留し、海に運び出すパイプラインが足りなくなると、WTI はブレントより 20 ドル以上も安くなりました。「内陸で余った原油」と「海上で取引される原油」の差が、そのまま価格差になったのです。

その後、パイプラインの増設と 2015 年末の米国の原油輸出解禁で WTI は海外へ出られるようになり、価格差は数ドルに縮まりました。2023 年には米国産の WTI ミッドランドがブレントの現物指標(Dated Brent)の構成原油に加えられ、2 つの指標はさらに近づいています。

現在、ブレント − WTI スプレッドが広がる主な局面は、①中東や海上輸送のリスクでブレントに地政学プレミアムがつくとき、②米国の在庫(とくにクッシング)が積み上がって WTI が相対的に弱くなるとき、③米国の輸出が強くて WTI が引き締まるとき(縮小)です。スプレッドの変化は「どの層で何が起きたか」を示す、簡単で有用な手がかりです。

見るべきデータ: 3 つの指標と 2 つのスプレッド

初心者は自分の取引商品が連動する指標(多くは WTI)を主に見つつ、ブレントを並べてスプレッドの変化を追うと、ニュースの読み違いを減らせます。

  • WTI 期近先物・現物スポット(クッシング)— 米国 CFD・ETF の多くが連動。EIA が現物価格を日次公表。
  • ブレント期近先物・Dated Brent — 国際ニュースの基準。EIA / FRED でヨーロッパ・ブレント現物を日次取得可。
  • ブレント − WTI スプレッド — 拡大は海上リスクか米国在庫の積み上がり、縮小は米国の引き締まり。
  • ブレント − ドバイ スプレッド(EFS)— アジア向け中東原油の相対的な強さ。中東の減産・増産で動く。
  • サウジアラビアの公式販売価格(OSP)— アジア向けはドバイ / オマーン平均に対するプレミアムとして発表される。

読み方の注意: 「原油が上がった」はどの原油か

ニュースの見出しが「原油急騰」でも、それがブレントの地政学プレミアムによるもので、WTI はさほど上がっていない、という局面はよくあります。自分の口座の価格が何に連動しているかを確認し、ニュースの指標と一致しないときはスプレッドの動きで差を説明できるか考える、という習慣が大切です。

また、ドバイは先物より現物の評価価格(Platts の査定)が中心で、日本の商品先物(大阪取引所のドバイ原油先物)は円建て・キロリットル単位で取引されます。ドルとバレルで語られる WTI・ブレントとは単位も為替の影響も違うため、同じ「原油」でも値動きを直接比べることはできません(第 4 章で単位換算を扱います)。

ライブデータ

WTI とブレント(現物スポット・3 年)
WTI USD/bbl 96.16 ブレント USD/bbl 114
40 60 80 100 120 40 60 80 100 120 140 23/10 24/05 24/12 25/07 26/02 26/09

品質がほぼ同じ 2 つの軽質スイート原油。ブレントが数ドル高い状態が通常で、差の変化が市場の状態を語る。

出所: FRED DCOILWTICO / DCOILBRENTEU

ブレント − WTI スプレッド(3 年)
ブレント − WTI USD/bbl 17.80
-10 0 10 20 30 40 23/10 24/05 24/12 25/07 26/02 26/09

拡大 = 海上リスクのプレミアムか米国在庫の積み上がり、縮小 = 米国の引き締まり・輸出増。

出所: FRED DCOILBRENTEU / DCOILWTICO

1 日 1 回更新。価格は TwelveData の日次終値(JST)、各要因の値は出所の公表ラグを含みます。

見るべきデータ

WTI 現物スポット(クッシング) EIA・FRED DCOILWTICO
ブレント現物スポット(ヨーロッパ) EIA・FRED DCOILBRENTEU
WTI / ブレント先物の期近価格 CME グループ・ICE
ドバイ / オマーン査定価格 S&P Global Platts・DME

よくある質問

Q. WTI とブレントはどちらが高いですか?
品質がほぼ同じなので本来の差は輸送費程度ですが、2010 年代以降はブレントが WTI より数ドル高い状態が通常です。WTI は米国内陸のクッシングで受け渡される内陸原油で、海に運び出す物流の制約から割安になりやすく、ブレントは海上輸送される国際原油で地政学プレミアムがつきやすいためです。価格差は米国の在庫や輸出、中東情勢で数ドル単位で変動します。
Q. 日本の原油輸入価格は何を基準に決まりますか?
日本が輸入する原油の大半は中東産で、その価格はドバイ原油とオマーン原油の平均価格を基準に、産油国が毎月発表する公式販売価格(OSP)のプレミアム / ディスカウントを加えて決まります。国内のガソリン価格や電力会社の燃料費に効くのは、WTI やブレントよりドバイ価格と為替(ドル円)です。
Q. CFD の「原油」はどの指標ですか?
証券会社・FX 会社によって異なり、WTI 連動とブレント連動の両方を扱う会社もあります。銘柄名(USOIL・WTI・CL・UKOIL・BRENT 等)と、取引説明書に書かれた参照先物を必ず確認してください。boobook.ai の分析対象は Exness の WTI スポット CFD です。

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