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COT レポートとは — CFTC が毎週公表する先物建玉の参加者別内訳
COT レポートは、米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週金曜日に公表する、火曜日時点の先物・オプション建玉の参加者カテゴリー別内訳です。1 つの市場について「生産者・商社」「スワップディーラー」「投機筋」などがそれぞれ何枚の買い持ち・売り持ちを抱えているかが分かります。この章では、レポートの制度的な仕組みと種類を整理します。
公開 · 執筆 boobook.ai 編集部
誰が、いつ、何を公表しているのか
発行元は米商品先物取引委員会(CFTC: Commodity Futures Trading Commission)です。CFTC は米国の先物・オプション市場を監督する連邦機関で、市場の透明性確保の一環として建玉の内訳を公表しています。
公表スケジュールは固定されています。毎週火曜日の取引終了時点の建玉を集計し、金曜日の米東部時間 15:30(日本時間では土曜日の早朝、夏時間なら 4:30・冬時間なら 5:30)に公表します。米国の祝日が重なる週は 1 営業日ずれることがあります。
対象は CFTC の監督下にある米国の先物取引所で取引されるすべての商品で、1 つの市場あたり 20 人以上の報告対象トレーダーがいる市場が掲載されます。貴金属(COMEX の金・銀・プラチナ)、エネルギー(NYMEX の WTI・天然ガス)、穀物(CBOT の大豆・トウモロコシ)、通貨(CME の円・ユーロ)、株価指数(S&P 500 先物)、米国債先物などが含まれます。
報告義務の仕組み — なぜ「誰が持っているか」が分かるのか
先物取引所の清算会員(FCM)や外国ブローカーは、一定枚数以上のポジションを持つ顧客の建玉を CFTC に日次で報告する義務があります。この「報告義務が生じる枚数」を報告水準(reporting level)と呼び、市場ごとに決まっています。例えば COMEX 金先物の報告水準は 200 枚で、金先物 1 枚は 100 トロイオンスですから、2 万オンス以上を持つ参加者が報告対象になります。
報告対象のトレーダーは、口座開設時に CFTC へ提出する書類(Form 40)で自分の事業内容を申告し、その内容に基づいてカテゴリーに分類されます。つまり分類は自己申告に基づく制度的なもので、CFTC が取引の意図を個別に判定しているわけではありません。1 つの参加者が複数の市場で異なるカテゴリーに分類されることもあります。
報告水準に満たない小口のポジションは、市場全体の建玉から報告対象分を引いた残りとして「Non-Reportable(非報告)」にまとめて示されます。
3 種類のレポート — Legacy・Disaggregated・TFF
COT には分類の粒度が異なる 3 種類があります。同じ市場・同じ週でも、どのレポートを見ているかで参加者の区分と数値が変わるため、最初に確認すべき点です。
- Legacy(旧来型)— 最も歴史が長く、参加者を Commercial(当業者)・Non-Commercial(非当業者)・Non-Reportable(非報告)の 3 つに分ける。Non-Commercial には Spreading(両建て)列がある。長期の比較に使いやすいが、Commercial に「現物のヘッジャー」と「スワップディーラー」が混在する。
- Disaggregated(分類別)— 2009 年から公表(データは 2006 年まで遡及)。商品先物向けで、Producer/Merchant/Processor/User(生産者・商社・加工業者・実需家)、Swap Dealers(スワップディーラー)、Managed Money(マネージド・マネー)、Other Reportables(その他報告対象)の 4 つに分ける。ゴールド・原油・穀物ではこれを見るのが標準。
- TFF(Traders in Financial Futures)— 2010 年から公表。通貨・株価指数・金利先物向けで、Dealer/Intermediary(ディーラー)、Asset Manager/Institutional(資産運用会社・機関投資家)、Leveraged Funds(レバレッジド・ファンド = ヘッジファンド・CTA)、Other Reportables の 4 つに分ける。円やユーロのポジションを見るときはこちら。
Futures Only と Futures-and-Options Combined
3 種類それぞれに、先物のみを集計した「Futures Only」と、オプションを先物換算(デルタ調整)して合算した「Futures-and-Options Combined」の 2 版があります。オプション市場が厚い商品ではポジションの実態を Combined の方が正確に反映しますが、デルタ換算は価格水準で変動するため週ごとの比較がやや不安定になります。
どちらを使うかより、「同じ版を一貫して使う」ことが重要です。ウェブサイトやツールによって既定の版が違うため、他所の数値と突き合わせるときは版を確認してください。
参加者カテゴリーの定義と、それぞれの典型的な行動
Disaggregated レポートの 4 カテゴリーは、COT を読むうえで最も重要な前提知識です。それぞれが「なぜその方向のポジションを持つのか」まで理解しておくと、数値の意味が立体的になります。
- Producer/Merchant/Processor/User — 現物を生産・保有・加工・消費する事業者。金なら鉱山会社・精錬業者・宝飾メーカー。将来の売値を固定するために先物を売る(ヘッジ)ことが多く、構造的にネットショート。価格が上がるほど売りヘッジを増やす「逆張り的」な行動になる。
- Swap Dealers — 銀行や商社のスワップ部門。顧客(年金・ETF・事業会社)との店頭取引で負ったリスクを先物でヘッジする。顧客の買いが多いほど先物を売るため、こちらもネットショートが多い。実質的には「顧客の投資需要の鏡」でもある。
- Managed Money — CTA(商品投資顧問)・ヘッジファンド・商品ファンド。他人の資金を運用し、トレンドフォローやマクロ戦略で売買する。方向を大きく振るため価格との相関が最も高く、「投機筋」として最も注目されるカテゴリー。
- Other Reportables — 上記に当てはまらない報告対象。自己勘定の大口個人や、分類が難しい事業法人など。金では無視できない規模のことがある。
レポートの入手先と、データの形式
一次情報は CFTC の公式サイト(cftc.gov)の Commitments of Traders ページで、毎週のレポートをテキスト形式(Short / Long Format)で読めるほか、過去分の一括ファイル(年次の CSV / Excel)と、プログラムから取得できる公開 API(Public Reporting API)が提供されています。API では市場ごとに固有の市場コード(例: COMEX 金は 088691)でデータを引きます。
実務では、公式データを取り込んでグラフ化した民間サイトやチャートツールを使うことが多いですが、その場合は「どのレポート(Legacy / Disaggregated / TFF)」「どの版(Futures Only / Combined)」を表示しているかを必ず確認してください。表示上は同じ「投機筋ネット」でも、Legacy の Non-Commercial と Disaggregated の Managed Money では数値が異なります。
COT の歴史 — 月次から週次へ
建玉内訳の公表は 1962 年に月次で始まり、1990 年代に隔週、2000 年から週次になりました。2009 年の Disaggregated、2010 年の TFF の導入は、金融危機後に「スワップディーラー経由の投資マネー(いわゆる指数投資)が商品価格を歪めているのではないか」という議論を受けて、Commercial の中身を分解して見せるためのものです。したがって 2006 年より前のデータで投機筋を見るときは、Legacy の Non-Commercial を使うしかありません。
見るべきデータ
| COT レポート本体(Legacy / Disaggregated / TFF) | CFTC: cftc.gov Commitments of Traders |
| 過去データ一括ファイル(年次 CSV / Excel) | CFTC: Historical Compressed |
| 公開 API(Socrata) | CFTC: Public Reporting API |
| 報告水準(市場ごと) | CFTC Regulation 15.03 |
よくある質問
- Q. COT レポートはいつ発表されますか?
- 毎週金曜日の米東部時間 15:30(日本時間では土曜早朝)に、その週の火曜日時点の建玉が公表されます。公表時点で 3 営業日古いデータである点に注意してください。米国の祝日週は 1 営業日遅れることがあります。
- Q. Legacy と Disaggregated はどちらを見ればよいですか?
- ゴールド・原油・穀物などの商品先物では Disaggregated が標準です。Legacy の Commercial には現物ヘッジャーとスワップディーラーが混在し、投機筋(Non-Commercial)にも分類が粗い部分があります。長期の歴史比較が目的の場合のみ Legacy を使います。通貨・株価指数・金利は TFF を見ます。
- Q. COT の参加者分類は正確ですか?
- 分類は CFTC への自己申告(Form 40)に基づく制度的なもので、取引ごとの意図を反映してはいません。例えば生産者が投機的な取引をしても Producer に計上されます。おおまかな傾向を読むには十分ですが、1 枚単位の厳密さを期待すべきデータではありません。