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COT レポートの見方 — 表の読み方、ネットポジション、COT 指数
COT レポートを開くと、数十の数字が並んだ表が出てきます。読み方の核心は「各カテゴリーのネットポジション(買い持ち − 売り持ち)を出し、その水準を過去のレンジと比べる」ことです。この章では、表の各列の意味から、ネットポジションの計算、建玉との関係、COT 指数・パーセンタイルによる「行き過ぎ」の定量化までを順に扱います。
公開 · 執筆 boobook.ai 編集部
表の構造 — 各列が意味するもの
Disaggregated レポート(Short Format)の 1 市場分は、おおむね次の要素で構成されます。上から順に、市場名と取引所、報告日、建玉の総数、そしてカテゴリーごとのポジションです。
- Open Interest(建玉)— その市場で未決済の契約の総数。すべての買い持ちの合計 = すべての売り持ちの合計なので、各カテゴリーのロング合計とショート合計はそれぞれ建玉に一致する(Spreading を両側に数える)。
- Long / Short — カテゴリーごとの買い持ち枚数と売り持ち枚数。
- Spreading(両建て)— 同一カテゴリーが同じ市場で買いと売りを同時に持っている分(限月間スプレッドなど)。Managed Money と Other Reportables、Swap Dealers にこの列がある。方向性のないポジションなので、ネットポジションの計算では無視してよい。
- Changes from(前週差)— 各列の前週比の増減。「今週何が起きたか」を最も端的に示す。
- Percent of Open Interest(建玉比)— 各列が建玉全体に占める割合。市場の規模が変わっても比較できる。
- Number of Traders(トレーダー数)— 各カテゴリーに属する報告対象者の人数。枚数が増えているのに人数が減っていれば、少数の大口が集中してポジションを持っている。
ネットポジションを計算する
カテゴリーごとに「ロング − ショート」を引くと、ネットポジションが出ます。プラスならネットロング(買い越し)、マイナスならネットショート(売り越し)です。仮に、ある週の COMEX 金でマネージド・マネーのロングが 18 万枚、ショートが 5 万枚だったとすると、ネットは +13 万枚のネットロングです。金先物 1 枚は 100 オンスなので、1,300 万オンス(約 400 トン)相当の買い越しということになります。
先物はゼロサムなので、全カテゴリーのネットを足すと必ずゼロになります。投機筋(Managed Money + Other Reportables + 非報告)のネットロングは、当業者(Producer/Merchant + Swap Dealers)のネットショートと鏡像の関係にあります。「投機筋が買い越しを増やした」と「当業者が売りヘッジを増やした」は同じ事実の両面です。
実務でまず見るのは、Managed Money のネットポジション、その前週差、そして建玉の前週差の 3 つです。この 3 つで「投機筋がどちらを向いているか」「今週動いたか」「市場全体の資金は増えているか」が分かります。
ロングとショートを分けて見る理由
ネットポジションは便利ですが、同じ「ネット +10 万枚」でも中身が違います。ロング 15 万・ショート 5 万の状態と、ロング 25 万・ショート 15 万の状態では、後者の方が両側に大きなポジションが積み上がっており、どちらに崩れても値動きが大きくなります。
特にショート側の積み上がりは「ショートカバー(買い戻し)による急騰」の燃料になるため、ネットだけでなくグロスのショート枚数が過去レンジのどこにあるかも見ておきます。金では、投機筋のショートが極端に膨らんだ局面の後に短期間で大きく反発した例が繰り返し観察されています。
建玉(OI)と価格の組み合わせで読む
建玉の増減は、価格の動きが「新規の参入」によるものか「手仕舞い」によるものかを教えてくれます。価格が上がって建玉も増えていれば新規の買いが入っており、価格が上がって建玉が減っていれば売り方の買い戻しが主因です。同様に、価格が下がって建玉が減っていれば買い方の投げ、建玉が増えていれば新規の売りです。
この 4 象限の詳しい読み方はゴールド要因シリーズの第 7 章に譲りますが、COT レポート単体で見るときは「Managed Money のネット前週差」と「建玉前週差」の符号の組み合わせで、その週の値動きが投機筋の新規参入だったのか清算だったのかを判別できます。
「偏り」を定量化する — COT 指数とパーセンタイル
ネットポジションの絶対値(「+13 万枚」)は、それだけでは多いのか少ないのか分かりません。市場の規模は年々変わりますし、金のように数年かけて参加者が増える市場では、10 年前の「極端」が今の「普通」になっていることもあります。そこで、過去一定期間のレンジの中での相対位置に変換します。
最も広く使われるのが COT 指数(COT Index)です。計算式は「(現在のネット − 期間中の最小値)÷(期間中の最大値 − 最小値)× 100」で、0 が期間中最も売りに偏った状態、100 が最も買いに偏った状態を表します。期間は 26 週(半年)・52 週(1 年)・156 週(3 年)が一般的で、短い期間ほど感度が高く、長い期間ほど「歴史的な極端」を捉えます。
似た指標にパーセンタイル(過去 N 週のうち、現在値より下の週が何 % か)があります。COT 指数が最大値・最小値の 2 点だけで決まるのに対し、パーセンタイルは分布全体を使うため外れ値 1 回の影響を受けにくいという違いがあります。どちらも「80 以上は買いに偏りすぎ、20 以下は売りに偏りすぎ」といった目安で使われますが、閾値は市場と期間で調整が必要です。
仮の数値で 1 週分を読んでみる
制度の説明だけでは実感が湧きにくいので、架空の 1 週分を読んでみます。以下はすべて説明のための仮の数値で、実際のデータではありません。
- 建玉 50 万枚(前週比 +2 万枚)— 市場全体の参加資金が増えた週。
- Managed Money ロング 20 万枚(+1.5 万)・ショート 4 万枚(−0.5 万)→ ネット +16 万枚(+2 万)— 投機筋が買いを積み増し、売りも減らした。前週差の符号が建玉と同じなので「新規の買い」が主因。
- Producer/Merchant ネット −9 万枚(−1 万)・Swap Dealers ネット −8 万枚(−1 万)— 当業者が売りヘッジを増やして投機筋の買いを受けている。ゼロサムの鏡像。
- Managed Money ネットの 3 年 COT 指数 88 — 過去 3 年のレンジで上位 12% の買い偏り。「買い余力が細り、悪材料での巻き戻しが急になりやすい」局面と読む。
- Managed Money のトレーダー数 110(前週 118)— 枚数は増えたのに人数は減っている。少数の大口に集中しており、その大口が方針転換すれば動きが大きくなる。
ライブデータ
ネットロングが過去レンジの上端に近いほど「買い余力が少なく、巻き戻しが急になりやすい」。方向ではなく混み具合を読む。
出所: CFTC Disaggregated COT / TwelveData
価格と建玉が同方向なら新規参入主導、逆方向なら手仕舞い主導(4 象限)。
出所: CFTC Disaggregated COT / TwelveData
| 項目 | 値(枚) | 前週差 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 建玉(OI) | 412,800 | +2,901 | 市場全体の参加資金の増減 |
| MM ロング | 135,699 | — | 投機筋の買い持ち |
| MM ショート | 8,310 | — | ショートカバーの燃料 |
| MM ネット | +127,389 | -5,727 | ロング − ショート。前週差と建玉前週差の符号で新規参入/手仕舞いを判別 |
| MM ネット 1 年パーセンタイル | 74.0 | — | 80 以上 / 20 以下が偏りの目安 |
| MM ネット 3 年パーセンタイル | 46.5 | — | 3 年レンジ: -26,767 〜 +219,029 |
| Producer/Merchant ネット | -26,777 | — | 現物ヘッジャー。構造的にネットショート |
| Swap Dealers ネット | -236,126 | — | 顧客の投資需要の鏡 |
第 2 章の「仮の数値で 1 週分を読んでみる」と同じ項目を実データで並べたもの。パーセンタイルは過去 52 / 156 週のネットの分布内での位置。
出所: CFTC Public Reporting API(市場コード 088691)
1 日 1 回更新。価格は TwelveData の日次終値(JST)、各要因の値は出所の公表ラグを含みます。
見るべきデータ
| マネージド・マネー ロング / ショート / ネット | CFTC Disaggregated COT(週次) |
| 各カテゴリーの前週差・建玉比・トレーダー数 | 同上 |
| 建玉(OI)と前週差 | 同上 / CME Group(日次) |
| COT 指数(26 / 52 / 156 週)・パーセンタイル | 上記からの派生計算 |
よくある質問
- Q. ネットポジションとは何ですか?
- カテゴリーごとの買い持ち(ロング)枚数から売り持ち(ショート)枚数を引いた値です。プラスなら買い越し、マイナスなら売り越しです。両建て(Spreading)は方向性がないので計算から除きます。先物はゼロサムなので、全カテゴリーのネットを合計するとゼロになります。
- Q. COT 指数はどう計算しますか?
- 「(現在のネット − 期間中の最小値)÷(最大値 − 最小値)× 100」です。0 が期間中で最も売りに偏った状態、100 が最も買いに偏った状態を表します。期間は 26 週・52 週・156 週が一般的で、目的(短期の感度か歴史的な極端か)に応じて選びます。
- Q. 建玉(オープン・インタレスト)とは何ですか?
- 市場で未決済のまま残っている先物契約の総数です。買い手と売り手が 1 組で 1 枚なので、全ロングの合計と全ショートの合計はいずれも建玉に一致します。価格の動きと建玉の増減を組み合わせると、値動きが新規参入によるものか手仕舞いによるものかを判別できます。